組織変更に伴うデータ集計の課題を解決! 部門マスタを使った対策方法の紹介

4月は多くの会社で新しい年度が始まるタイミングなので、多忙な毎日を過ごされている方も多いのではないでしょうか。
 
4月は大規模な組織変更が行われるタイミングでもあり、多くの企業や組織でデータ集計の課題が生じる時季でもあります。部署の統合や分割により、前期と今期で数字の連続性が保てなくなり、分析しやすい集計結果を得ることが難しくなるのです。
 
このような場合です。
 
  • 2022年度の東京本社の売上は、取引先AAAとBBBから構成されている。
  • 2023年度からは、東京本社と新宿支店に分割され、
    • AAAは東京本社が担当
    • BBBは新宿支店が担当となる。
 
 
上のグラフのように、そのまま集計すると、2022年度は東京本社の売上しかありません。しかし、BBBの売上(表内の赤字)は「新宿支店」として集計されていた方が、業績の分析や営業計画の策定などをしやすいです。
 
本記事では、このような課題を解決するための方法を、初めて焼き直しに取り組む方にもわかりやすく紹介します。私が以前在籍していた会社では「焼き直し」と呼んでいました。疑似的に部署名を付け替えることで、連続性を持った集計結果ができあがり、組織変更を意識することなく分析できるのです。
 
 

組織変更には大変なデータ集計修正がつきもの

企業でデータ集計をする人にとって、組織変更は大きな関心ごとであり、悩みの種でもあります。

組織の変更に伴う過去データの修正

企業の組織変更でよくあるケースとして、
  1. 複数の部署が1つに統合される
  1. 1つの部署が複数に分割される
  1. 部署名が変更される
  1. 部署が新設・廃止される
などがあると思います。
 
これらに伴って、データ作業者には、
  • 過去のデータと、マスタデータをつないでデータを更新する
  • 必要に応じて、上記の後に集計作業をやり直す
必要があります。

データの連続性の確保

マスタを使ってのデータ更新は手間がかかるものの、作業としては単純なものだと言えます。しかし、組織変更により過去のデータと連続性が失われることはとても大きな課題となります。
 
例えば、下記のような変更があるとします。
 
2022年度の組織編成:
  • 東京本社
  • 横浜支店
  • 川崎支店
  • 千葉支店
 
2023年度の組織編成:
  • 東京本社 (東京本社の一部が新宿支店へ分割)
  • 新宿支店 (東京本社から分割されて新設)
  • 神奈川支社(横浜支店、川崎支店が統合)
  • 千葉支店 (変更なし)
 
組織変更は以下の理由で実施されたとします。
  • 東京本社の業績がよかったため、部署と取引先を分けて組織ごとの自律性や独自性を持たせる
  • 横浜支店と川崎支店は業績が悪かったため、統合してコストカットを図る
  • 千葉支店は相対的に売上が小さいが、地域性が求められるので変更はなし
 
組織変更が行われ、2023年度の実績も出てきた結果、部署ごと企業ごと売上は下表のようになりました。
 
このデータをそのまま集計・可視化すると下のようなグラフになってしまいます。
 
このグラフでは東京都は青系、神奈川県は赤系と色を分けたので、それなりに見やすくなっています。川崎支店と横浜支店が統合されて神奈川支社になったことは直感的にわかりますし、2023年度の時点から見ると、2022年度の内訳が見れるという意味では便利かもしれません。
 
しかし、東京本社、新宿支店に着目すると、使いづらいデータだと言わざるを得ません。東京本社、新宿支店の2023年と2022年の実績比を単純に計算すると、下表のようになります。
 
東京本社の営業部長や事業責任者からしたら、「部署が小さくなったのだから、そうなるでしょ」と言いたくなりますし、新宿支店の責任者の立場だったら、「参考にできる数値がない…」となります。
 
以上ご紹介した通り組織変更が起きると、データの作業を行う人、分析して使う人への負担が多々発生します。
 
 

焼き直しで組織変更にともなうデータ集計の修正をスマートに

このような場合は、2022年度の部署名を疑似的に2023年度の部署名に置き換え、
グラフ化すると下記のようになり、2022年度から2023年度の対応がわかりやすくなります。
過去のデータを焼き直すとこのような集計・可視化が可能になります。
 
2023年度中に営業活動を行っていくにあたって、
  • 取引先ごとの、2022年度の売上はどれほどかを知りたい
  • 売上見込みを立てるために、担当領域での2022年度の売上総計を知りたい
というケースはよくあります。
 
焼き直しをすればそれらがスマートに解決できます。逆に言うと、それをしないと勘に頼ったり、精度の低い営業設計をすることになります。そのため、他者に納得してもらえない、設計・実績に大きな乖離が発生するなどの弊害が出てきます。

焼き直しの手順

焼き直しをするには、
  1. 売上データに、結合キーを作成
  1. 部門マスタを用意し、同じく結合キーを作成
  1. 結合キーを基に二つのデータを結合
します。
 

1. 売上データに、結合キーを作成

結合キーの作り方は焼き直しで何をやりたいかによって、ケースバイケースになります。
 
ここでは、組織変更が
  • 「年度」が替わるタイミングに発生する
  • 「部署名」の置き換えを適宜行う
  • 「取引先」単位で、部署の統合や分割が起こる※1
という例で説明します。
 
下図のように、上記三つのカラムを連結します(キャプチャはGoogle スプレッドシートですが、Excelでも同様の数式を書きます)。
 
これは後段のVLOOKUP関数で使います。
 
 
※1. ここに取引先ではなく、「案件名」、「担当営業」などが入るケースもあるかと思います。基本的な考え方は一緒で、 「年度」&「部署名」&「(分割・統合の単位)」となります。
 

2. 部門マスタを用意し、同じく結合キーを作成

1のデータに紐づけるマスタを準備します。
 
作成の時のコツとしては
  • 上記の、「年度」、「部署名」、「(部署の統合・分割の単位)」で表を作成する
  • 変更が起きるパターンを網羅する
  • 変更が起きないパターンは含めない
  • 結合キーは1と同様の手順で作成する
が挙げられます。
 
 
変更のパターンが網羅されていないと、当たり前ですが、期待した通りの結果は得られません。焼き直しで最も重要(かつ規模によっては最も神経を使う)な作業なので、慎重に進めましょう。
 
「変更が起きないパターンは含めない」というのは経験上、計算が軽くなる上、なにより間違いが少なくできるポイントだと思っています。逆の考え方として、「変更が起きないパターンもすべて列挙する」方法もありますが、間違いが混入する原因になるので、余計なものは抜きで作りましょう。
 

3. 結合キーを基に二つのデータを結合

あとはVLOOKUP関数を使って、下のように書きます。こうすると、2022年度の部署名が変更になる行に変更後の名前が入ります。
 
「#N/A」となるのは、マスタに結合キーのパターンがないためです。下記のケースで発生します。
  • 過去の年度、かつ、焼き直す必要がない
  • 現在進行中の年度である
 
これを解消するにはIFERROR関数を使うとよいです。#N/Aのときは元の部署名をそのまま使うという処理です。
これで焼き直し作業は完了です。新しくできた「焼き直し部署名」を使って、集計・可視化を行います。

焼き直しの注意点

焼き直し業務を経験した人間の視点から、注意点をあるある形式でまとめてみました。経験のある方なら、思わず大きく頷いてしまいそうなことばかりかなと思います。

あるある1. マスタの抜け漏れ

手順のところで少し触れましたが、マスタを作成する作業は本当に大変な作業です。規模が大きくなると作業も長時間になり集中力も弱ってきます。 そのような時に
  • マスタを1行消してしまった
  • セルのコピー&ペーストミス
  • タイプミス
などが起こりがちです。
 
焼き直しに限った話ではないですが、 地味に気をつけてほしい点です。

あるある2. ノウハウの消失

業務の特性上、 業務のコツやノウハウが明文化されにくい作業です。
  • 1年に1回しか発生しないので、前回どうやったか忘れてしまっている
  • 前回担当者が辞めてしまっていて、どうやっていたかわからない
  • 期末期初の繁忙期に発生するので、 マニュアル化する時間がない
 
これらの理由で、焼き直しを諦めざるを得ない企業もあるかもしれません。未来の事業のために(来年の自分のために!?)労力を掛けてでも対応しておきたいところです。

さいごに

自分で書いておいて言うのもなんだかと思いますが、この記事に興味を持つ人ってどれぐらいいるんでしょうか(笑)。組織の中でがっつりとデータに関わる人ってそれほど多くないと思いますし、その中でも焼き直しに関わる人はさらにわずか。
 
だからこそノウハウ化されないし、明文化はもっとされない。過去に焼き直しに苦しんだ身として、あの頃の自分に送りたい知恵として今回の記事を書いてみました。
 
今まさに焼き直し業務に苦しんでいる人、これから苦しむかもしれない人、一人でも多くの人にこの記事が届くことを切に願いつつ、筆を置きます。
 
ここまで(なかなかマニアックな記事を)読んでいただき、ありがとうございました。
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